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更新日: 2024.05.16

脂肪を便として排せつする!? │ 内臓脂肪減少薬

医学博士植地 貴弘さん

脂肪の吸収を抑えるオルリスタット

食事中に含まれる脂肪は、膵臓(すいぞう)から分泌される脂肪分解酵素リパーゼによって分解され、消化管から吸収されます。このリパーゼの働きを阻害することができれば、脂肪の吸収も阻害され、痩せることができるのではないかという考えに基づいた薬が、大正製薬から2024年4月に発売された「アライ®(一般名:オルリスタット)」です。
オルリスタットは1997年に海外で販売が開始された、使用経験・実績の多い薬です。日本でも同様の肥満症治療薬「オブリーン®」が医療用医薬品として承認を目指しましたが、保険適用にしては効果が少ないということで、発売されませんでした。今回「アライ ®」は肥満症治療薬ではなく、内臓脂肪減少薬として薬局やドラッグストアのカウンターで販売することにより販売が承認されたという背景があり、肥満症患者や高度肥満(BMI 35kg/m2以上)の方には使用できません。

服用後に起こる事象と注意点

オルリスタットは消化管管腔(かんこう)内で脂肪分解酵素リパーゼの活性を阻害し、食事由来の脂肪の吸収を抑制します。食事由来の脂肪のうち、約25%を便として排せつすることが期待できます。結果として内臓脂肪量は減らすことが認められていますが、内服した人の30%以上に、放屁時の油の漏れ(便失禁)が起こりやすく、特に服用初期の脂っこい食事の後などには症状があらわれやすくなります。内服のタイミングによってはナプキンやパッドを工夫して使用する、遠出する前日に飲まない、着替えを持参するなどの注意が必要です。
実際に筆者も過去に海外でオルリスタットを入手し、焼き肉の前などに内服したことがあります。翌日には大量の油の便が出て、放屁でも大量の便が漏れ出て、下着だけでなく服をも汚すということは実際に起こり得ると感じており、使用する際は周到な準備が必要です。

GLP-1受容体作動薬との比較

一方で、GLP-1受容体作動薬の「リベルサス®(一般名:セマグルチド)」は、肥満または過体重の成人においてオルリスタットと比較して体重減少を増加させることが示されており、糖尿病がある方は、こちらの使用が優先的になる場合もあるため、主治医と相談してオルリスタットの使用を決定しましょう。GLP-1受容体作動薬は肥満症に効果があることから、自由診療で、痩せ薬として安易に処方されるケースも報告されていますが、糖尿病のない肥満患者は、膵炎(すいえん)、腸閉塞、胃不全麻痺(まひ)のリスク増加と関連している可能性があり、注意が必要です。

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