介護費用が抑えられる?
「世帯分離」のメリットデメリット
◆介護関連の上限額に有効
同じ住所に暮らしながら、住民票は別々に登録する「世帯分離」。社会保障や各種給付などは世帯主や世帯全体の所得をベースに金額が決まることが多いため、分離するかしないかで金銭的な影響を受けることがあります。
世帯分離をする方が有利になることが多い例としては、介護にまつわる費用が挙げられます。公的介護サービスを利用する際は、所得や世帯構成によって1割、2割、3割などの自己負担をしています。その自己負担額が一定額を超えると「高額介護サービス費」として戻ってきます。住民税非課税世帯は世帯単位で月2万4,600円が上限額。世帯分離をせず現役の子世帯と同一世帯の場合は住民税非課税世帯とみなされず、上限額が月4万4,400円などになります。
同様に、医療と介護の自己負担額を合算して上限額を定める「高額医療・高額介護合算制度」があります。こちらも70歳未満の住民税非課税世帯の場合、年間34万円ですが、そうでない場合は60万円や67万円など所得に応じて上限額があがります。
資産が一定額以下の人が、介護施設の住居費や食費を支給してもらえる「特定入所者介護サービス費」も、住民税非課税世帯であることなどが条件になっています。
◆健康保険料は不利になる場合も
一方、健康保険料の観点では不利になるケースもあります。例えば、子の勤務先の健康保険に扶養家族として加入している場合、世帯分離を行うことで扶養家族とみなされなくなり、親世帯が別途自分で国民年金保険料などを支払う必要が出てくる場合があります。
子も親も会社員ではなく国民健康保険に加入する場合は、世帯分離が有利になることも不利になることもあります。国民健康保険料は、世帯単位で計算を行います。この時、年間の限度額が定められているため、合算して上限に達している場合は、世帯分離しない方が有利なことが多いでしょう。世帯分離を行うことで、親世帯の年間所得などが96万5,000円(単身65歳以上・年金のみの場合206万5,000円)以下の場合、保険料の均等割部分が2割、5割、7割などの減額が受けられるため、こうしたケースに該当する場合は世帯分離の方が有利になることがあります。