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更新日: 2023.05.09

認知症に備えるお金の対策を
後見制度と家族信託

1級ファイナンシャルプランニング技能士/ CFP®認定者/宅地建物取引士/ 住宅ローンアドバイザー風呂内 亜矢さん

◆認知症になると契約行為ができない

サービスや商品の説明を受けて、購入や売却を検討するという、一見当たり前に感じる行為。認知症になると、こうした契約行為を行うことができません。
例えば、親が認知症になった際、親名義の自宅を売却した資金で介護サービスを受けることなどが思い浮かびます。
しかし、持ち主である親が認知症になっていると、本人が売却という契約を行えないことから、思っていたように手続きを進められない可能性があります。短期間であれば、子どもが立て替えて支援することも検討できるかもしれませんが、長期化の可能性を考えると、親自身の財産で介護費用をまかなえる方法を模索する必要があるでしょう。
認知症になると、申し立てに基づいて家庭裁判所が定める「法定後見人」が財産の管理などを行います。親族が選任されることもありますが、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることもあります。親のための費用であっても、引き出す際は法定後見人の管理を受けることになりますし、自宅の売却においては家庭裁判所の許可も必要です。自宅の売却は介護費用を支払うことができないなど、正当な理由があれば認められますが、経済情勢で売却が有利だからという理由では認められるのが難しい傾向にあるようです。

◆認知症になる前に選べる選択肢

後見人には「任意後見人」という制度もあり、こちらは認知症になる前に、自分の意思で後見人を選び契約しておくものです。
明示的に担当してもらう人を指定できる利点はありますが、自宅の売却は法定後見人同様、家庭裁判所の許可が必要です。認知症になる前の対策としてもう1つ考えられるのが、家族信託です。
家族信託の場合、親を委託者、子どもを受託者などとして名義の移転(信託譲渡)を行い、その契約で定められた範囲内において、子どもが自宅の売却などを家庭裁判所の介在なく柔軟に行えます。コスト面では家族信託では契約書作成などの一時的な費用がかかり、後見人では継続的な費用がかかるとされていますが、契約内容や、実際の管理業務により変動があります。選択肢が複数ある間に、役所や社会福祉協議会の法律相談、家族信託や後見制度を専門としている弁護士事務所や司法書士事務所などで情報を集め、我が家に好ましい選択肢はどれなのかを家族で話し合うことが大切かもしれません。

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